推しは推せるうちに推せ
生まれて初めて、好きな芸能人の画像フォルダを作った。
これまでの人生においても、好きになった芸能人はいた。
その人がドラマに出演すれば毎週録画した。リアルタイムでも視聴していた。
バラエティ番組に出演すれば素の姿が見られると大喜びしていた。
映画に出演すれば可能な限り早く観に行った。
過去の作品はレンタルショップで借りて揃えた。
彼自身の出演作品のみならず、彼が好きだと言った映画や小説、出演作品の原作にも興味を持った。
SNSもフォローしていたし、ファンのまとめる情報も逐一チェックしていた。
お気に入りの作品であればセリフが暗唱できるほど見返した。
しかし、これほどまでに好きだったにも関わらず、いつの頃からかすっかり熱が冷めてしまっていた。
今でもCMやドラマで見かければ「おおっ」と思うが、大好きだった頃ほどの執着は何処にもない。
最近何に出ているのかすら知らない。
自分が特別飽きっぽい性格だとは思わないが、特定の芸能人を長く熱く推し続けることが難しいことは知っている。
そうなると、新しく別の芸能人にハマるのも躊躇してしまう。
あれほどの情熱をもう一度別の人に向けられる自信がない。
追いかけるには体力が必要だし、お金も時間もかかる。
それほどまでに没頭しても、いつか冷めてしまうと思うと、費やす全てが勿体無いような気もしてしまう。
こうした理由で推しを作ることに及び腰になっていたにも関わらず、何故か突然沼に片足を突っ込んでいる。
ここ3日ほど画像集めに勤しみ、冒頭に述べた通り専用フォルダを作った。
写真集やファンクラブの存在を知り、購入及び加入を検討している。
こうなると、ハマる前の「いつ飽きるとも知れないものにお金や時間や労力を費やすのは無駄」という考え方はどこかへ吹き飛んでいる。
いつか飽きてしまうことは、今没頭しないことの理由にはならない。
むしろ、いつか飽きてしまうからこそ、今全力で没頭するのだ。
スポーツでもゲームでも音楽でもなんでも、熱中できるものがある生活は楽しい。
その高揚感、充実感はこの瞬間にしかない。
それに払う対価など、いかなる金額いかなる苦労だったとしても取るに足らない。
久しぶりにこのように思える存在が現れて、生活が生き生きとしている。
この楽しさが続くうちは、思う存分没頭しようと思う。