La Pomme d’Eve!
妹がずっと観たがっていたため、合格祝いにプレゼントしたのだ。
しかし、鑑賞後の気分の高揚は私も負けていない。その勢いに任せて忘れる前にこの感動を書き留めておこう。
席は2階の最前列であり、全景ら観られるが舞台からは遠かった。しかし、そんな距離など感じさせないほどの迫力があった。歌声も演技も力強く繊細で、呼吸すら押さえつけられるような2時間半だった。
ストーリーやキャラクターについて深く記すことはネタバレになるため避けるが、どちらも大変魅力的だったため少しだけ語らせてほしい。
まずストーリーについて、この作品は単なるエンターテインメントの物語ではなく、問題提起がなされている。
舞台を娯楽として楽しみたい人にとっては邪道かもしれないが、私としては大歓迎だ。
せっかく素晴らしい作品を観たのに「面白かった〜」で終わってしまっては勿体ない。作品から何かを学び取り、自分の思いと向き合うことができれば記憶や感動はより強固なものになるだろう。
問題提起の仕方が偽善的で押し付けがましければこうは思えなかったかもしれないが、この作品でそういったものは一切感じられなかった。
物語の見せ方が観客の心を惹き付けて離さないため、問題提起も興ざめにはならず、それどころか爪痕となって私たちの心に残るのだ。
キャラククターは良くも悪くも人間味があり、完全な善人も完全な悪人もいない。僅か2時間半の舞台の中でのみ生きているとは思えなかった。
2階から観ても感情がありありと伝わってくる表情と声色、歌声の美しさには何度も鳥肌がたった。深く説明出来ないのがもどかしいが、彼らの激しい感情は観客の心に突き刺さり、恐怖や涙すら呼び起こすほどだった。
お気に入りのシーンは酒場での歌と踊りだ。オペラ座の怪人ではマスカレードのシーンが1番好きな私にとって、この酒場のシーンとマスカレードのシーンには似たものが感じられた。
どちらのシーンも、重く切ないストーリー展開の中でスパイスのような役割を果たしている。退廃的で蠱惑的、明るい曲調と洒落た踊り、それらは観ていてワクワクするのだ。
その酒場の名前が「イブの林檎」だった。禁じられた実、禁じられたからこそ魅力的な誘惑だ。
私にとってこのノートルダムの鐘そのものが禁断の果実だったと言える。もちろん禁じられていた訳ではないが、迂闊に手を伸ばせばのめり込んでしまう気がしていた。
案の定、脚本、構成、舞台、小道具、演技、台詞、楽曲など、この作品を構成する全ての要素に惚れ込んでしまった。ソワレではマチネとは違う人物が主人公を演じたと知って、ソワレも観れば良かったと後悔したほどだ。
一貧乏学生の私は観劇を趣味にするには文化的素養も金銭的余裕も足りていない。
しかしこの作品への熱は俄なものではないため、近々原作小説を購入し理解を深めたいと思う。
2018年の終わりに、こんなにも心を奪われる作品に出逢えたことが嬉しい。