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独りよがりで良いじゃない

情報の一方通行性

好きな小説家を聞かれたら、真っ先に挙げるのは湊かなえさんだ。
小学校6年生の時に母が買ってくれた『告白』を読んで衝撃を受けて以来、単行本化された作品はほとんど読んできた。
湊さんの作品では、同一の出来事を異なる視点から見ることで新たな事実が浮かび上がってくる、という手法が多く用いられている。
私はこの手法が大好きだ。人間がいかに自己中心的に生きているかをまざまざと見せつけられ、思い込みが事実をねじ曲げる恐ろしさを目の当たりにさせられる。
このような認知の歪みによる誤解は現実の生活にも多く存在する。私自身は自分が被害者だと思っていても、相手からすれば私に非がある、という状況はこれまでたくさんあったのだろう。
私は被害妄想が酷いタイプなので、湊さんの作品を通じてこのことに気がつけたことに感謝している。自分を中心に考えてばかりいると、反省しようともせず自らの不遇を嘆く馬鹿な子供のまま一生を終えることになりかねない。
たとえどんなに相手が悪いと思える状況であっても、そうせざるを得なかった相手の言い分を想像することは大切だ。
ただし、過ぎたるはなお及ばざるが如し、だ。最近ニュースで殺人事件などが報道されると、被害者に同情するより先に、人を殺さなければならないほど追い詰められてしまった犯人に同情してしまうようになった。これは弁護士か捻くれ者の仕事だろう。