素手で熊狩り
私が初めて赤ネイルをした時の妹からの評価だ。
お洒落に関心はあるものの、手先が不器用な私にとってネイルは敷居が高い。
見事なまでにムラが出るし、えげつないくらいはみ出るし、乾かしてる間にどこかにぶつけて剥げるし、そもそもセンスがない。
独特の香りや所要時間に対する抵抗もあり、あまり挑戦することがなかった。
高校生までは校則違反であったためしていなくても気にならなかった。しかし大学生になると、周りに綺麗な爪をした友人が多いことに気がついた。
みんないつの間に練習してたんだろう。
もともと手先が器用なのかな。
しかも、ただ色を塗るだけではなく、キラキラした石が乗っていたり、バイカラーになっていたり、ラインやドットが入っていたりする。
手や指は視界に入る機会が多いため、そこが可愛らしいと非常に好印象だ。
周りに良い印象を与えるだけでなく、もちろん自分にとっても可愛い指先はモチベーションが上がる。
人に影響されやすい私は、大学に入ってから様々な色のマニキュアを集め、塗り方を調べ、毎週のように爪の色を変えるようになった。
やり始めれば楽しいもので、何色か塗り分けたり、簡単なラインを引いたりするようにもなった。
ネイルに合わせてコーディネートを決めたり、逆に新しい服に合わせてネイルを考えたりするのは服選びの時間短縮にもなる。
人に褒められると嬉しいし、写真を撮る時にも可愛い爪だと見栄えが良い。
ちなみに何度やってもはみ出さずに塗ることは不可能なので、はみ出すことは恐れず塗る。
熊狩り上等。
あとから綿棒と除光液で修正すれば良いんだよ。
そんなこんなですっかりネイルにハマっていたのだが、ある日除光液でマニキュアを落とした時愕然とした。
自爪がくすんだ紫色になっていた。
マニキュアの色が落ちていなかったのでは無い、爪が全力で体調不良を訴えていたのだ。
考えてみれば、染料によって皮膚呼吸が妨げられているのだから爪に悪いのは当たり前だ。
貧乏学生の私は安く買えるマニキュアばかり用いているため尚更だ。
怖くなったためしばらくマニキュアは控えた。
代わりネイルオイルやハンドクリームを塗り、過労死寸前の爪を労わった。ごめんね。
最近ではだいぶ爪の調子も回復してきたため、適度にネイルを楽しんでいる。
しかし、依然として下手だ。
友人達の爪の綺麗なことと言ったら!
ムラやオーバーがないのは勿論、デコレーションパーツはバランスよく飾られており、デザインもブレなく描かれている。
ネイルサロンでやってもらっている子もいる。プロの手にかかった爪は、指先に10個の宝石がついているかのようだ。
ズボラな私は、それらの宝石達をすぐ欠けさせたりどこかに落としたりしそうでサロンに行く勇気が出ない。
というか、セルフネイルの子もサロン通いの子も、頭洗う時とか怖くないのだろうか。
絶対パーツどっかいっちゃう。無くなってたらショック過ぎる。
いや、そういう一過性のものであるからこそ価値があるのかもしれない。
可愛いって奥が深い。
当面は自力で楽しむつもりだが、進歩が見られないのが悲しい。
お得意のInstagramで綺麗な塗り方や流行りのデザインを勉強してはいるのだが、まだまだだ。