聖菓の日
バレンタイン。
海外から日本に持ち込まれたイベントの中で、クリスマスに負けず劣らず根強い人気を誇っている。
その形態はお菓子会社の策略により本来のものとは異なってしまっているが、大のチョコレート好きである私にとっては願ったり叶ったりだ。
2月に入るや否や、毎年の恒例行事としてデパートへ赴いた。
催事場の皮を被った戦場でチョコレートを吟味するのだ。
無論自分用だ。
近頃はSNSの普及により、所謂「インスタ映え」スイーツが大流行している。
動物や化粧品を象ったチョコレート。
惑星を模したチョコレート。
カラフルなコーティングやトッピングが施されたチョコレート。
持ち帰る贈答用のチョコレートのみならず、イートイン用のソフトクリームやワッフルなども豊富だ。
会場には軽快な音楽が流れており、惜しみない試食の並もおしよせてくる。
そこらのアミューズメントパークより遥かに楽しい空間で、至福のひとときを過ごした。
財布と体重をしっかりと反比例させながら。
無論自分でチョコレートを作るのも好きだ。
1月のうちからチョコレートのレシピを載せているサイトやアプリを見て回り、何を作ろうかと思案する。
買い物に行く度材料を買い揃え、調理器具や包装紙も用意する。
こういった準備段階すら楽しいのがお菓子作りの良いところだ。
今年は珍しく妹も興味を示したため、2度その楽しみを味わえた。
妹に作り方を教えながらお菓子作りをする私を見て、母が「湯煎する時、板チョコをお湯に入れようとしてた子がねえ。変わるものね。」と言っていた。
え、私そんな破天荒なことしてた?
今年作った生チョコタルトは、日頃恐ろしく(文字通り恐ろしく)寝起きの悪い妹が「美味しい!!」と叫んでくれたため、少なくともお湯で薄まってはいなかったと思う。
集中講義真っ只中であるため、大学で友達とチョコレート交換を楽しむことができた。
あげた時の笑顔や感謝の言葉は本当に嬉しいし、作った甲斐があると思える。
手の込んだクッキーや日頃買わないお菓子を貰えるのも、友達との仲が深まるきっかけになる。
聖ウァレンティヌスも、死後1500年以上も経った後、こんな形で名を残しているとは夢にも思わなかっただろう。
恋人たちのために殉教したと言われている彼は、恋人達に限らずたくさんの人々を笑顔にしてくれている。